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413135別室

413135の別室

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1000文字小説 ~石の話~

 先日、川辺を歩いていた時である。前の方を見ると川
の中に大きな石があるのを見つけた。だいぶ下流のほう
なので既に結構角が削り取られて丸くなっていた。大き
な丸い石である。
 その石を見たときに、私はふと小学校時代に友達と遊
んでいたことを思い出した。
 私の小学校は市内の郊外にあったのだが、校庭がやた
らと広かった。当時の私は、友達などとその校庭でよく
遊んでいたのだが、ある日かなり大きな丸い石を見つけ
たのである。校庭の原っぱにドンと横たわる大きな石で
ある。
 さて、小学生というものはよくわからないことをする
もので、私たちはその石を懸命に動かそうとしたのであ
る。小学生一人の手では動かすことの出来ないものであ
る。私たちは休み時間ごとに校庭に走り出て、少しずつ
少しずつその石を押して転がしていった。
 目的地は? 何のために? 勿論、小学生であった私
たちがそんなことを考えている筈もなく、ただただひた
すらに押し続けて行った。
 校庭の途中には砂利道があった。今まで以上に押しに
くいところでも私たちは懸命に押し続けていた。その結
果、丸かった石は削れ少しずつ表面ががたがたになって
きた。
 すると、どうしたことか私たちの中でも仲間割れが生
じ始めたのだ。しっかり押してないだろう、とか、どう
して来なかったのだ、とか。
 それでも、私や幾人かで必死に押し続けた。その時に
は目的地が見つかり、目的も見つかっていた。目的地は
木陰の穴に、目的はもとあっただろう場所に戻すこと。
 小学生らしい不合理な行動にしかし、その石は最後ま
で付き合ってくれた。押し始めて一月も経った頃に、私
たちは目的地に到着し、意志も丸く戻った。
 その時には、仲間割れしていた友達も仲直りをして、
みなで喜んでいた記憶がある。
 ところで、今の私はどうであろうか? あの石のよう
に角は取れているのだろうか? 思えば仲間割れの中心
に立っていたのは常に私であった。角が立っていたのは
私の方だったのだ。
 それでは、今の私は? あの石のように丸くなってい
るのだろうか。いや、おそらくそれはまだまだだろう。
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